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2009/03/05

新聞記事掲載(日刊工業新聞)

平成21年3月5日(木) 日刊工業新聞
テクノ学び隊 高速ヒートサイクル成形

 思わず触れてみたくなるほどの光沢を放つ外観をした家電製品、実はこれ、塗装ではなくプラスチック素材そのもの。これが小野産業が三井化学と共同開発した「高速ヒートサイクル成形(RHCM)」と呼ばれる技術だ。

 黒色で際立つ効果
 RHCM技術により成形品の光沢は増し、製品は漆黒調に仕上がる。小野産業の社長はこれを「ペイントレス、ピアノブラック」と表現する。薄型テレビの外枠でこの技術を使えば、画面コントラストが鮮明になる効果も得られるという。
 この技術の秘密は、成形に使う金型の温度調節にある。RHCMは金型を高温に熱した状態で樹脂を射出、樹脂が流れ込んだら一気に冷却し成形する。そうすることで金型面への樹脂の転写が良くなり、光沢ある製品ができる。また、従来の成形法に比べ、細やかな「シボ」を転写できる。透明なプラスチック製品の成型も可能で「花瓶のように透き通った光沢も表現できる」(小野社長)という。

 筋状欠陥を解消
 従来の成形法では、「ウエルドライン」と呼ばれる筋状の欠陥が出ることが課題であった。このプラスチック業界での長年の課題を、RHCMは金型を高温に加熱して成形することで解決した。ウエルドラインができなくなることで、塗装も不要になり、リサイクルの際塗膜除去のコストもかからない。このため、RHCMは環境にやさしいモノづくりにつながり、製品のデザインや色合いにもプラスの効果がある。
 また、RHCMは従来の射出成形とほぼ同じ時間で成形でき、ガラス繊維やフィラー等樹脂の強化材を含む成形でも外観がきれいに仕上がるため、パソコンの筐体等従来金属が多かった製品にもプラスチックを代替使用し、製品を薄肉軽量化することに成功している。

 反り、へこみ抑制
 しかし、RHCMも製品の反りやへこみを防ぐ効果は乏しかった。そこで小野産業は、米トレクセル社の持つ微細発泡技術(MuCell)とRHCMを融合した成形技術「R&M」を'04年に開発した。
 MuCellは樹脂に超臨界流体を注入して微細気泡を形成し、高い寸法精度と軽量化が可能になる技術だが、一方で表面に「スワールマーク」と呼ばれるガス状痕が残ってしまう。R&Mの開発により、RHCMとMuCellの長所を活かし、互いの短所を克服した高外観で反りやへこみを抑えた寸法精度に優れた成形品の製造が可能となった。
 家電やエレクトロニクス製品など幅広く活用されるRHCM。今後も新たな事業分野への普及が進みそうだ。